東北タイ 満月の映画会
こんなに暑い夏は昔行った東北タイの田舎を思い出す。
タイの田舎は朝が早い。
煙いような朝、赤茶けて乾いた道を黄土色の袈裟を着た托鉢僧と牛がすれ違う。
ホームステイしている奥さんにお供え物を用意してもらってお寺にお参りに行く。
本堂には金色の仏様、読経の声。お線香と花の香り。
この国の人たちはなんて美しい合掌をするのだろう。
まねてみたけど、自分には難しかった。
座っている石の床が冷たくて気持ちいい。
朝からバンバン花火の音がする。
今夜は満月、夜に広場で映画をやるそうだ。
広場ではやぐらを組んで垂れ幕をかけてスクリーンを用意している。
朝から何度も子どもたちが私に教えてくれる。
「一緒に行こう」
夕方、待ち切れずに迎えに来てくれる。
ちょっとお姉さんはおしゃれをして顔に何か白いものを塗っている。
牛や犬のフンを踏まないようにしながら、子どもたちと広場に向かって歩く。
「ちょっと待って!」
急にストップさせられた。
「もっとゆっくり歩こう。ヨーコ、歩くのが早すぎる!」
おしゃべりしたり、道端の花を摘んだり、歌を歌いながら、みんなでゆっくり歩く。
広場に向かうこの時から映画が始まっていたんだ。
「ああ、ごめん」
映画本編が始まる前に国王の映像が流れる。
手を組んでいたら子どもに叱られた。見るとみんな直立不動。
「ああ、ごめんなさい」
どんな映画だったのかすっかり忘れてしまったが、二度あやまったことと、
満月を見ながら日本を想ったことは覚えている。
もう20年も前のこと。
あの子たちはもう立派なお母さんなんだろうな。
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夏はSadeが聴きたくなります。
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