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佐野洋子『ふつうのくま』 「空を飛ぶってどんな気持ち?」「いいたくないんだ」

    

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「ふつうのくま」 BEAR    AND   MOUSE

    佐野 洋子

 

くまの家には、”おじいさんのおじいさんのおじいさんのおじいさん”が空を飛んだという赤いじゅうたんがしまってありました。

くまはその赤いじゅうたんがあることで、何をしても何を食べてもさびしい気持ちになります。

 「おまえがそらをとべるくまだと わたしはうれしいけどな」

くまのお父さんが死ぬ時に言った言葉です。

 

とうとう、くまは空を飛ぶ決心をします。

ずっとくまと一緒に暮らすねずみが、どんなに引きとめても出発します。

 

しかし、崖のうえでいざ赤いじゅうたんにすわると勇気が出ません。

でももし自分が空を飛んだら、仲良しのねずみがきっと喜ぶだろうと思うとワクワクしてきます。普通な顔で帰ってやろうかと考えているうちに怖くなくなります。

 

ねずみはずーっと空を見上げています。空の色が変わっても見上げていて倒れてしまいます。

すると、おなかにくまの荷物に入れたドーナツが落ちてきます。

 

見上げると空をものすごい勢いで飛んでいく赤いじゅうたんを見ます。

「すごいなぁ、とんだんだ」

 

でもねずみは、普通ではなくなったくまはもうもどらないと思い泣きます。

「すごいくまだけど、ぼくはすごいくまよりもまえのくまのほうが好きだったんだ。どうしてはちみつをなめただけで、しあわせになれなかったのかしら。でも、すごいくまだったなぁ。」

 

 「ただいま」

くまは・・・まっ白いくまになって帰ってきました。

 

ねずみがくまに、黒かった時と、まっ白い時とどっちが好きか聞きます。

「どっちでもいいよ」

空を飛ぶってどんな気持ち?

「いいたくないんだ」

逆にくまはねずみに自分が帰ってきた時どうだったか、普通だったか聞きます。

ねずみはしばらくたってから言います。

「きみがかえってきたときね、ぜんぜんふつうじゃなかったよ」

 くまはじっと考えていました。

「いまのいまが しあわせだね」 ねずみがいいます。

くまは じっとだまっていました。

 

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空を飛べたら・・・誰もが一度は考えると思います。

 私は、みんな本当は昔空を飛べたのではないかな、その記憶があるのではないかなと思います。

 

以前見た夢を思い出しました。

以下は私の夢の話です・・・

 

どれくらい昔なのか、私は修道僧の一人として中世のような修道院に暮らしています。他にも多くの修行僧達がいます。

その修道院の高僧が亡くなったようです。私はその亡くなった高僧からのメッセージを受け取るように言われます。どうも私にはそういう役割があったようです。

しかし、いくら心を静めても何も受け取ることができません。

 

業をにやした役職に就いている僧達が、相談して私をある場所に連れて行きます。

そこは、亡くなった高僧が一人黙想をしていた場所で、岩をくりぬいたようになっています。私はそこに膝まづき祈りました。

すると私の体に何かが流れ込むのを感じました。満たされた気持ちになりました。

体が軽くなるような気がしました。気づくと私は地上から浮いています。もっと上がろうと思うと自由に高く漂うことができました。

下で役職の僧達が驚いて見上げています。私はとても幸せで、空を飛んだり漂ったりを楽しみました。

 

しばらくして、親友のことを思い出し彼のところに飛んで行きました。

すぐに彼のところに着いて声をかけますが、彼には私が見えないようです。

いえ、私にはわかりました。慌てた役職の僧達が「何も見えていないようにふるまえ」と言い渡してあったのです。

心を共にしてきた親友は、私など見えていないようにしていましたが、彼の気持ちは痛いほど伝わりました。

 

私がこれからどういうことになるかがわかりましたので、私がやりかけいた仕事(何か書物を編纂していたようです)を引き継いでくれるのは彼しかいないと言葉ではなく心で彼にあとを託しました。

彼に私の想いが伝わり、私を振り向きました。でもそれは彼にとって危険なことであったので、私はすぐに高く向きを変えて離れてから地上に降り、修道院の本部のようなところへ歩いて行きました。

 

言葉でのメッセージを受け取ることは許されても、それ以外のメッセージは許されないとわかっていました。

私が見えているとしていいのか、見えないことにすべきか、興味と驚き、恐れの表情の修行僧仲間の間をゆっくりと歩いた時のことは今でも忘れられません。

 

 

空を飛ぶことは普通なことだとわかると、いままでと同じではいられません。

それからが大事ではないかと思います。

 

「ふつうのくま」の話とずれてしまったかもしれませんが、私の夢のお話です。

 

     

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