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テンベアする世界

        サヘール

          ー遊牧の原像を訪ねてー 寺田 周明   写真集

            

サヘール(Sahel)とはサハラ砂漠を中心にした南縁部に広がる半砂漠の乾燥地域である。

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 私は「砂漠に立ちたい」とずっと思っていました。残念ながら行くことができないので、寺田氏の撮影旅行記と合わせながら、写真集のページを繰ります。

 

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 夕暮れに連なる砂丘は、銀色に輝く砂がまぶしく、金色に映えたと見る間に無限の鮮やかさでオレンジに、ピンクに、さらに紫にと変わってゆく。

変幻自在の色彩の推移の中、砂丘はその生命を躍動させ、妖しくうねりを繰り返す。

  

ここでは、人はだれもが、耳鳴りを覚えるような静寂の大地に言葉を失って立ちつくし、一粒の砂にも似た己の存在を知らされ、ただひたすら無力の思いに耐えなければならない。

 

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サハラ砂漠の岩山には、いたるところに数千年前の太古の人々が描いた岩絵が残っている。

      

神秘と絶対。非情な褐色の「無」の世界。生きるもの全ての生存を拒絶するかのようなこのサハラ砂漠の過酷な自然に、人はなぜかくも強く魅せられるのか。

それは、現代文明の日常にまいぼつし、衰弱しつつある精神のうめきー原初への郷愁なのであろう。

   

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   写真集の序文-サヘールに想うーで、和崎洋一氏はサヘールのことを      

    テンベア(スワヒリ語)する世界。と言います。

 

テンベアとは、二本足で歩くこと自体を目的とする行為。(日本語で言えば「歩くために歩く」ということになるのでしょうか?)

これはおそらく、果たすべき目的と行きつくべき目的地がなければ歩くことのない文明人には耐えられないことであろうと・・・

「指すこと無ければ即ち皆至るー目的地を決めなければ誰でも目的地に到達するものだ(列氏)」

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              移ろわない「時」

          

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     静寂とは音がないことではない。

 

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    写真集を広げながら

     ”耳鳴りを覚えるような静寂”に耳をすまし、

     ”テンベア”に身をゆだねるひと時を持つ・・・

      それが今の私の「砂漠に立つ」ことです。